コラム

Prebid~導入後のチューニングとCookieレスを見据えたメディアデータ連携~

Kazuya Shionoiri

本記事は2019年12月に投稿した『Prebid~Header Biddingの導入と運用について~』の続編になります。

前回のコラムから約2年が経過し、Prebidの導入媒体もより多くなっている状況と思います。ほとんどの場合は、一定コストを払っても売上が伸びる為、継続している状況になっています。また基本的な導入方法として、一部の個別の事情があるBidderを除いては、競争効果を最大化するために、”多くのBidder”を”多くの枠”へということで定着しているものと思います。

導入後のチューニングについて

導入後、改善項目や課題として多く挙がるものとして”速度”があります。
Google Ad Manager(GAM)の前にPrebidの処理を加えているので、その分広告リクエストが遅くなるという点になります。

    対策例
  • タイムアウト値
  • Bidderを減らす
  • Bidderの優先順位をつける

どの形も基本的には、”速度”がどの程度改善するか、”収益”がどの程度落ちるかとのトレードオフ的な要素があり、このバランスを分析しながらチューニングするようなものとなります。

日本におけるBidderの分布は外資プラットフォームの導入もあり、上記のようにならざるを得ない傾向があると思います。
左下のポジション群は外すという判断はしやすいのですが、左上のポジション群が外資プラットフォームを中心に一定数あり、削減し難い傾向にあります。またDSP側の視点では、GoogleのOpenBidding、AmazonのTAM、Prebidなど多くの同じ広告リクエストが流れることもサーバーコストとして問題になっているのも事実です。
Supply-Path Optimization(SPO)観点において、グローバルで特定広告主が特定DSPを用いて特定SSPと戦略的な提携をおこなっているケースもあり、メディアの広告運用としてはそういった広告主を持っているSSPもあることを把握する必要があると考えます。
Prebidのver5では、AdvertiserDomainが必須となっているため、今後このような経路の把握もしやすくなるかもしれません。

メディアデータを絡めた今後の拡張性

一方で延期はされたもののGoogleによるChromeの3rd Party Cookie廃止など、メディアにとってPrebidによる収益が下がる懸念もあります。
こうしたCookieレス対策として、メディアが保有する資産をPrebidのリクエストに付与することでよりBidを増やすような施策も検討する必要があります。

ID連携の中で実装しやすいところでは、CriteoIDが挙げられます。
Criteo Direct Bidderが入っていれば対応する必要はないとの記載ですが、CriteoIDを実装することで、対応しているSSPにCriteoIDが渡り、そのSSP経由でのDSPとしてのCriteoがBidしやすくなるというものです。

UnifiedID、SharedID、LiveRampIDといったメールアドレスベースのID連携は、特定の個人を識別がしやすいものとなります。日本のメディアにおいては、メールアドレスを取得しているケースが少なく、また取得しているケースにおいても現段階における広告主側の状況が不透明な部分もあり、対応が進まないケースもあるように見えます。
とはいえ、今後の広告主需要を見越して、DSP、SSPは基本対応している状況です。今後これらの普及活動が広がる可能性があります。業界活性化、準備段階と思いますので、対応可能な状況にあるメディアは先に入れておくことで、先行者メリットは得られる可能性があるかもしれません。

またGoogleはこうしたメールアドレスを活用した共通ID連携には対応しないと明言しているため、対応することで、Prebidを入れている意義のある収益機会をつくることもあると思います。
(参考:https://blog.google/products/ads-commerce/a-more-privacy-first-web/

1st Party Dataの連携については、Prebid経由で各Bidder(SSP)にパラメータ形式でデータを渡す形となります。SSPはそのデータをもとに、DSPとDealを組むことで、そのデータを活用できるようになるものと思います。渡せるデータとしては、特定の枠に関する情報、特定Bidderのみへ連携する情報、Appのコンテンツ情報、IABの定めるContentやAudienceのTaxonomyの情報などがあります。今後、SSPがそのパラメータを直接DSPに渡してDSPが活用できる形というのも可能性としてはあるのではないでしょうか。IAB Taxonomyのカテゴリなど、すでにSSPとしてコンテンツ分析できるケースもありますが、媒体側が明示することでより質の高いものができ、コンテキストの解析の一助になれば今後DSPのそういったものを活用したBidが増えることでしょう。

さいごに

エンハンスでは、メディアの資産を用いた総合的なマネタイズ支援を行っております。
今回はPrebidに関して記載しましたが、今後上記の可能性をひきつづき調査・実証して、メディアの価値向上、市場の拡大に貢献してまいります。
Prebidを一つの部品として、全体をとらえた商品設計やPublisher Trading Deskの構築をお手伝いさせていただきますので、ご興味がございましたら、お気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。

 

Kazuya Shionoiri

大手新聞社や専門メディアのコンサルティングを担当。最新テクノロジー情報のキャッチアップも素早く、エンハンスコンサルタントメンバーを束ねる。バンドマン(ギター担当)