コラム

【徹底解説!】Core Web Vitalsにおける運用型広告の影響分析と実施施策3選

Saori Ishii

2021年5月28日にGoogleは検索ランキングにおけるアルゴリズムの大幅な変更の一つとして、ユーザー体験(UX)を評価するページエクスペリエンスシグナルを導入する予定であると発表しました。それには、『Core Web Vitals(コアウェブバイタル)』と呼ばれる『読み込み時間(LCP)』『インタラクティブ性(FID)』『ページ・コンテンツの視覚的安定性(CLS)』の3つの重要指標が含まれており、ユーザーにとって快適でストレスなく利用できるページ作りが急務となりました。
現時点では段階的に導入されており2021年8月末までに完了すると発表しています。
本記事でコアウェブバイタルと運用型広告の影響を調査したうえで、効果的とみられる施策についてご紹介できればと思います。

運用型広告がコアウェブバイタルに与える影響

コアウェブバイタルの対策にあたり、運用型広告の影響は考慮しなければなりません。運用型広告では、HeaderBiddingや複雑な広告ユニット実装を伴う場合が多く、読み込みが遅くなったり、コンテンツのシフトが発生することがわかっています。媒体社の大きな収益源となっている一方で、コアウェブバイタルのスコアには悪影響を及ぼすとされています。

実際に各広告実装がどのような影響を与えるのか、PageSpeed Insightsを使用して弊社コーポレートサイト(テスト環境)で検証をおこなった結果をご紹介します。

テスト環境ということもあり、ブレ幅が大きいものの、広告タグを実装することでスコアが大幅に減少することは間違いなさそうです。ただしコアウェブバイタルのスコアを上げるために、広告収益を下げてしまっては本末転倒。今後は広告収益面を考慮したSEO対策、コアウェブバイタルへの対応が重要になってくると考えられます。

コアウェブバイタル向上のための実施施策

次に、コアウェブバイタルのスコア向上のために弊社で実施した3つの施策をご紹介できればと思います。ユーザーエクスペリエンス自体を上げるための施策は山ほどありますが、本記事では広告収益面を考慮したうえで実施した施策をご紹介できれば幸いです。

①広告領域の確保

CLSスコアであるページの安定性を高めるために広告領域の確保を実施しました。
レイアウトシフトが発生する要因は、画像や広告サイズが指定されていないことが挙げられています。
運用型広告を実施する場合、

  • 複数の広告サイズを受け入れることでより単価の良い広告を入札する
  • 高単価な入札があった場合のみ表示させる(ない場合は閉じる)

といった運用をするケースが多く、ページのガタつきに直結していました。 
運用型広告を実装したままCLSスコアを上げるためには、サイズ不定な要素を無くし、レイアウトのズレを解消する必要があります。

・広告サイズを固定し、表示領域を確保する

広告は固定サイズで導入が推奨されていますが、動的要素を入れないといけない場合やサイズ固定ができない場合はプレイスメントの最小の高さで確保しておくと、シフトが最小限に抑えられます。最小の高さは過去の配信レポートからレンダリングされたサイズを確認いただくことをおすすめします。

・呼び出し広告サイズに2/3の高さの設定と自社広告の入稿

広告が呼び出されなかった場合、空白が発生する可能性があります。その場合の対策として、第二の呼び出しサイズに2/3の高さの広告を設定する、自社広告を入れておくなどである程度解消されると考えられます。また、ATFでレイアウトシフトが発生するとスコアへ影響が大きいと考えられるため、優先枠を絞って段階的に対応を進めても良いと思います。

②『preload』の実装

次に推奨する方法は、リソースを事前に読み込ませるために『preload (プリロード) 』を実装し、表示速度を高める方法です。
preloadとは先行読み込みをブラウザに指示する機能でヘッダー部分に記述して利用します。preloadを活用し優先的にScriptなどの要素を呼びだすことができます。
運用型広告を実装する場合、広告を表示するまでに各SSPなど外部にリクエストを飛ばし入札事業社と単価をきめ、広告を戻すという複雑な処理が必要となり、必然的に表示が遅くなってしまいます。またHeaderBiddingにしてもウォーターフォールにしても接続先が増えるほど表示速度は低下します。
広告表示速度を上げるためには、リクエストをいかに速く送るのかがポイントとなります。そこで効果的な方法がpreloadです。
preloadを活用し、広告表示に関係するGoogleのタグコードである『gpt.js』やHeaderBiddingのコードの『prebid.js』などを先に読み込ませることにより、ほかのコンテンツを表示させている間に、広告表示の準備ができるようになります。また、「gpt.js」や「prebid.js」自体は、他のJavaScriptの読み込みを妨げないので、できるだけ先頭近くに設置するだけでも効果があります。

③JavaScriptやCSSの軽量化

最後に使っていないファイルの削除や記述の軽量化をおすすめします。この方法も比較的、少ない工数で実施できる対策と考えられます。
LCPスコアを低下させる原因にレンダリングブロック、FIDスコアの低下の主な原因は大量のJavaScript実行による遅延です。
レンダリングブロックとは、Webページを読み込んで画面に描画することを待たせてしまう要因のことで、そのような外部ファイル等をレンダリングブロックリソースと呼びます。一般的なレンダリングブロックリソースはヘッダー部分のjsやCSSファイルであることが多く、そうした遅延の要因を減らす施策が重要となっています。レンダリングブロックの解除や軽量化には、以下のような施策が有効と考えられます。

・minify化(コードの中の不要なコメント、改行、空白の削除)や、使用していないファイルの削除

PageSpeed Insightsで「改善できる項目」を見ていただくとより具体的に表示速度に影響している Script やリソースがわかります。

この中で着手できそうな点から一つずつ対策いただくことをお勧めします。

・プラグインの活用

WordPressの場合は、『W3 Total Cache』というプラグインのminify機能を使うことで、HTMLや、CSS、JavaScriptをコンパクトにする設定ができるため表示速度の改善が期待できます。

以上、対策方法でした。比較的多くのメディア様でご活用いただける内容かと思いますので、是非ご参考ください。

Core Web Vitals(コアウェブバイタル)を調べるツール

コアウェブバイタルの改善には自社のサイトの課題を可視化することが大前提です。サイトスピードやスコアを調べるツールは以下のようなものがあるのでこちらも併せて是非ご参考にしていただけますと幸いです。

おわりに

最後までお読みいただきありがとうございました。コアウェブバイタルの対策については日々議論されている内容です。より具体的に知りたい方、ご不明な点があれば是非お気軽にお問い合わせください。また、こうしたGoogleアップデートも踏まえてエンハンスでは媒体社の方への『Publisher Treading Desk』というコンサルティングサービスをご提供させていただいております。こちらもご興味あれば、以下フォームよりご連絡お待ちしています。

 

Saori Ishii

大手出版社WEBメディアやAppのマネタイズコンサルティングを担当。エンハンスでは広告主向け商品企画をしていた時期もあり。お酒(特にビール)が好き。ランチは迷ったら沖縄料理。