コラム

ポストCookie時代を生き抜く海外プログラマティック広告業界の最新動向

Hideo Uchida

2020年1月にGoogleがChromeブラウザの3rd Party Cookieを2年以内に廃止すると発表したことをきっかけに、プログラマティック広告業界各社はポストCookie時代に向けた取り組みを本格化させ、来る未来に向けて着々と準備を進めています。
そんな中、ビッグニュースが舞い込んできました。Googleがその期限を約2年ほど延期し、2023年後半以降にすると2021年6月24日に発表したのです。日本は欧米と比べてポストCookie対策への取り組みがかなり遅れてしまっていますが、これにより十分な準備期間を確保することが出来ます。つきましては、海外プログラマティック広告業界の最新動向を改めてご紹介させていただくことで、デマンドサイドとサプライサイド双方でポストCookie時代に向けたお取り組みのご参考になりましたら幸いです。

CTVなどの動画広告がネット広告市場の成長を牽引

独立系最大手SSPのRubicon ProjectはCTVに強いTelariaと合併してMagniteとなり、さらにSpotXを買収するなど戦略的に動画広告領域を強化することで、既に売上の2/3を動画広告で稼ぐようになっています。
他SSP各社もCTV領域の売上拡大に注力しており、DSPサイドにおいてもThe Trade Deskが決算で発表しているようにCTVの売上は爆上がりしているようです。これらの動きは、Cookieによる配信が困難になると見越し、デバイスIDやメールアドレスを利用した配信が可能なCTV広告領域への開発投資を強化した結果であると言えます。
日本においても、欧米と比べて普及は遅れているもののCTV利用者は増加傾向にあり、CTV広告市場は右肩上がりに急成長することが予想されています。

Unified ID 2.0などの代替IDソリューション

GoogleによるChromeの3rd Party Cookie廃止アナウンスにより、Cookieの代替となるIDソリューションにも注目が高まっています。
The Trade Deskが主導して開発しIAB Tech Labが引き継いだUnified ID 2.0やLiveRampなどの代替IDソリューションをSSP各社がサポートし、DSPに送るビッドリクエストにそれらのIDを載せてくるようになり、Cookieの代わりとなるIDとして利用され始めています。その流れを受けて、海外の大手媒体社ではサブスクリプションを強化し、ユーザーにクーポンなどのインセンティブを付与するなどしてメールアドレスの取得を促す取り組みを進めています。
LiveRampを導入した媒体では、既にCookieが使えなくなっているSafariでCPMが350%増加し、全体平均のCPMは20%増加、リーチ可能なユーザーが25%増加した事例もあるようです。また、最近ではAmazonが独自のIDソリューションをリリースする計画であることが報道されており、各社Cookieに代わるID基盤の構築を急いでいます。一方、日本では朝日新聞社やRettyなど一部の媒体が先進してLiveRampを導入する動きはあるものの、バイサイドでの活用が進んでおらずその影響は欧米のようには至っていない状況となっています。
AppleがiOS15でメールアドレスを匿名化する機能を追加するとの発表や個人情報保護規制強化に向けた動きが活発化しており、各社個人情報保護と収益化の狭間でなかなか一歩踏み切れずといった状況であるように思われます。しかしながら、数%でもメールアドレスが取得できる場合には、海外事例から察するにその3倍の売上に繋がる可能性があり、日本でもデマンドサイドとサプライサイドの双方でCookieレス時代に向けた準備を急ぎ進めていくべきでしょう。

PPID(パブリッシャーがユーザーに割り当てる識別子)の活用

広告配信で3rd Party Cookieが利用できなくなると、広告主側のデータを利用した配信は現時点で利用可能な前述の代替IDを利用する以外にはなくなってしまいます。その結果、広告主がこれまでターゲティングしていた属性や趣味嗜好などのデータはほぼ利用できなくなり、ポストCookie時代では媒体側の1st Party Dataを活用せざるを得なくなります。それ故、海外の媒体社ではより多くの1st Party Dataを集め、1st Party Cookieを利用して広告主がターゲティングに活用できるようPMPの仕組みを利用して広告メニューを用意しています。
この広告メニューの鍵となるのがPPID(パブリッシャーがユーザーに割り当てる識別子)で、SSP経由でDSP側にPPIDを共有することで媒体単位であればユーザー毎にフリークエンシーキャップを掛けることもできるようになります。自社で代替IDを生成しないと宣言したGoogleは、PPIDをオープンオークションも含めて広告配信に利用できるよう、海外でその仕組みのテスト運用を始めており、PPIDの活用にも注目が高まっています。

コンテキストターゲティング

前述のユーザーIDに基づく広告配信はユーザー同意を基本とするため配信対象となり得る母数が少ないことが課題とされています。そこでユーザーIDに紐付いた興味関心データに代わって、ユーザーが今まさに読んでいるコンテンツの内容に応じてターゲティングを行うコンテキストターゲティングに再注目が集まり、業界各社はソリューションの開発を進めています。
リターゲティングで有名なCriteoは2021年4月に海外でコンテキストターゲティングのソリューションをリリースしました。広告主と媒体社の双方で取得した1st Party Dataに加えて、各ページのURL・タイトル・カテゴリ・画像・テキスト・キーワードを分析し、Cookieを利用せずにユーザーの興味関心の高い商品の広告を配信することができるソリューションを海外で先行して提供しています。
他のDSPにおいても同様にコンテキストターゲティングの機能を追加開発する動きが見られ、ポストCookie時代の代替ソリューションとして台頭してくることが予想されます。そのため、媒体社側としては、URL構成やカテゴリ分類を広告主が求める興味関心項目やキーワードに合わせた形に見直しておくとよいでしょう。

SPO(サプライパスオプティマイゼーション)

近年Header Biddingの台頭により同じユーザーの広告リクエストが複数のSSP経由でDSPに届くようになり、DSPは各SSP毎に広告リクエストを処理する必要があるためそのインフラコストが過剰になってきており、サプライパスを最適化するSPOの動きを本格化させています。それにより、媒体側で複数のビッダーを追加したとしても数日は買い付けが増える可能性はありますが、バイサイド側では買い付けを行うSSPを精査してその他SSPの広告リクエスト自体を止めてしまい、特定のSSPでのみ配信できるように最適化をしています。これらの動きは媒体側にとってはネガティブに聞こえてしまうかもしれませんが、買い付けるSSPを限定することによりDSPの機械学習が効率的に働き、結果として媒体側にもより多くの広告配信を行うことができるようになっています。
媒体側に注意していただきたいのは、そもそも複数のビッダーを追加しない方がよいというわけではなく、デマンドサイドによっては特定のSSPでのみ配信するケースもあり、媒体側としてはあらゆるパスを用意し、デマンドサイドに合わせて最適化を行うのが無難です。例えば、海外大手広告代理店のGroupMでは、Index ExchangeとSPOに関する特別契約を締結しており、Index Exchangeを優先的に買い付けることで$1.5M(約1億6,500万円)のコストを単体で削減しています。SPOの成果が好調なため、その後SpotXやPubmaticとも特別契約を行いSPOを強化しています。そのため、もしこれらのSSPに接続していない場合には、GroupMなどによる買い付けを増やす機会を喪失している可能性があります。また、他の海外大手広告代理店においても、SPOは当たり前になってきており、媒体社と広告主による直接交渉も以前より増えてきており、日本においてもSPOに向けた動きは今後も拡大していくことでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。このような海外の最新動向も踏まえ、Enhanceでは媒体社様への「Publisher Treading Desk」というコンサルティングサービスをご提供させていただいております。ご興味のある方がいらっしゃいましたら、お気軽にお問い合わせください。